回転寿し

世界“カイテンズシ”戦争 寿司 vs Sushi

先日(1月5日)のNHKスペシャルで回転寿司が取り上げられた。「寿司 vs Sushi」というのは、世界進出を目指す日本企業とイギリス企業の覇権争いのことで、中東のドバイは元気寿司とYO!Sushiという二大チェーンが、意外にも、はじめて同じ地域に出店したケースなのだという。先に店を構え、繁盛しているYO!Sushiに対して、あくまで正攻法的に日本の握り寿司を根づかせようとする元気寿司は苦戦を強いられている。それまで生魚を食べる文化のなかった中東では、ヨーロッパ風のロール寿司など、フュージョン寿司に強みのあるYO!Sushiに、やはり一日の長があるのだろう。

回転寿司という仕掛けに着目したイギリス人の社長は、外国人(非日本人)シェフは日本人のように寿司に対する固定観念にしばられていない分、自由な発想で新しいメニューを生み出すことができるという。彼は寿司という料理の潜在的可能性だけではなく、回転する寿司の演出、つまり回転寿司のエンターテイメント性にも重きを置いているようだ。

したがって、「寿司 vs Sushi」という図式は、「すし」というものに対する両者のコンセプトの違いを表すものでもある。日本において、それまでの立ち寿司の伝統を打ち砕く、いわば革命勢力であった回転寿司チェーンが、ここでは日本の握り寿司の伝統にこだわることを宣言する。いまのところ、守りに入ったほうが劣勢のようだ。番組はドバイの「戦況」をそう伝えている。YO!Sushiの本拠地、ヨーロッパへの進出を視野に入れる元気寿司にとって、この事実はどう映るのか。

元々東南アジアを起源とする発酵食品であるすしが、伝播の過程で素材・調理法を変えながら、やがて今日の握り寿司を生んだことを考えれば、寿司が世界的に普及する過程であらためて変化したとしても何の不思議もない。逆に言えば、いくら外国人が奇抜な発想でこしらえたとしても、寿司が寿司でなくなるわけではない。もちろん、寿司が日本人だけのものであるはずもない。ピザやカレーの場合のように、本場のそれとは似て非なるものだからこそ、世界各国で受け入れられるのだ。

番組はその一方で、アジア諸国など、それまで生魚を食べる文化のなかった国々に新しい食文化を普及させた功績も指摘している。とはいえ、寿司の世界的普及によって問題になるのはむしろ、後半言及された水産資源の枯渇の危機だろう。この事実は、生魚という食材にこだわらない未来の寿司に、確固たる存在理由を与えるはずだ。

乱獲によって減った魚に代わる新たな食材探しも進んでいる。ここでも日本人と外国人の対応は違う。「代替魚」や「食品偽装」が問題になるのは、日本人が新しい寿司種より、慣れ親しんだ名前を好む傾向があるからだろう。他方、中国産のざりがにを試すYO!Sushiのシェフは、新たな食材をいかす新たな調理法の開発に余念がない。

この柔軟さというか、いいかげんさが、寿司という食文化に新風を吹きこむのか。あるいは、「スシブーム」を単なる一過性の流行に終わらせてしまうのか。結論を出すにはまだ早いようだ。

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廻転寿司処 タフ

あざみ野と藤沢に店舗を置く回転寿司店。土曜のランチタイムに訪問。人気店らしく、店内は混みあっていた。周囲の客の、皿を積み重ねていくペースも心なしか速いようだ。狭い店内を多くの寿司が回っている。

生のネタに力を入れているという点では、大江戸や三崎港に近いが、黒板に産地を明記しためずらしいネタの種類はより豊富で、思わず目移りしてしまう。皿の種類は105円から500円以上まであるが、それぞれの価格設定は他店よりやや低めか。残念なのは、やや固めに炊かれた酢飯が、冷めるとぼそぼそしてしまうこと。ちょうど、おひつが空きそうなタイミングだったからか、直接注文しても同じだった。ちなみに、ここもあらかじめロボットで成形したシャリ玉をその場で寿司に仕立てているようだ。訪問する日時によって変わるのかはわからないが、ネタの質や価格を考えると、シャリの出来があまりよくないのが惜しい。

他に、あぶりやカルパッチョなど、回転寿司らしいネタもあるが、カルパッチョ風にぎりはマヨネーズとにんにくチップの後味ばかりが口に残った。

公式HPはなし。住所、営業時間などについてはこちら(あざみ野店藤沢店)を参照。

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☆☆東京・元気寿司

八重洲地下街にある元気寿司の旗艦店。東京駅から見ると地下街の一番外れにあり、少し歩かされるが、地下道を通って、雨の日も濡れずにたどり着ける。木材の暖色を基調とした落ち着いた内装。日本クレセント製のコンベア台は御影石製だ。手前のカウンター席と奥のテーブル席があり、流れる寿司を見ながら食べたい一人客、二人客はカウンターへ、落ち着いて酒と料理を楽しみたいグループ客はテーブルへ、と分かれる。

皿の種類は126円から800円まで。新鮮な活物からカリフォルニアロールまで、ネタのバラエティは豊富。サラダ、焼物、揚物など、酒肴になる一品料理、各地の地酒・焼酎・ワイン・サワー・カクテルなど、ドリンクメニューも充実している。つまり、酒と肴が揃った回転寿司として使うか、寿司も食べられるダイニングバーとして使うかは客次第、というわけである。

背もたれのある椅子の座り心地もよく、思わず長居してしまいそうだ。客の回転率を上げるのではなく、客を楽しませ、客単価を上げることを目指す新業態のモデル店的位置づけなのだろう。「すしおんど」「元気寿司」「千両」「東京元気寿司」の4ブランドを展開する元気寿司チェーンによると、この店のコンセプトは以下のとおり。

「女性を中心にしたトレンドリーダー層をターゲットに新感覚の店づくりを追求した都市型店舗。寿司をメインとした創作日本料理と、それに合うおいしいお酒を用意しております。」

モード系回転寿司の出現は実はパリやロンドンのほうが早く、このタイプの店が日本に登場するのは2000年前後。しかし、2002年出版の『回転寿司の経済学』で、業界の新潮流として紹介された東京駅近辺の四つの回転寿司のうち、いまも生き残っているのは、ここ、東京元気寿司だけ。元気寿司系列のなかでも、このスタイルの店がその後増えていないところを見ると、モダンなスシバーとしての都市型回転寿司が普及するにはまだまだ時間がかかるのだろう。

山葵の質は高くないが、調味料や調理法など、回転寿司らしい楽しい工夫がいろいろあるせいか、あまり気にならない。

おすすめ:白えび(399円。にぎりで。甘くねっとりした食感。)

公式HPはこちら

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回転寿司 網元徳造丸

網元徳造丸は、伊豆の水産会社が経営する活魚料理チェーン。伊豆東海岸を中心に支店を展開、伊東駅前に同名の回転寿司店がある。漁師や漁船を連想させる店名が、地のうまい魚にありつけるという期待をかきたてる。網元を名のる大チェーンだけあって、仕入れにも自信があるのだろう。

大箱の立ち寿司店を回転寿司に転用したのか、店内は奥まで伸びる長いカウンターに沿ってコンベアを設置するという変則的な造り。つけ場は壁を背にしているので、端まで行った寿司はそのまま折り返してくる。つまり客の目の前には、行きと帰りの「複線」のレーンがあるが、奥を流れる皿には手が届きそうもない。

メニューは安いものは126円から、伊豆らしいネタを選ぼうとすると250円以上の皿が中心になる。皿の種類が多くて値段がわかりにくいが、ホワイトボードやお品書きに、手書きでその日のおすすめが書かれている。HPや店のメニューを見ると、あまり目新しいものはないように思えるが、地魚系のめずらしいネタは、仕入れの状況が日々違うのか、ほとんど手書きのほうにある。

せっかくなので、まずは地魚三種の盛り合わせ(525円)を頼んでみた。この日は、タチウオ、ホウボウ、イサキ。ネタが新鮮なことは歯ごたえでわかる。とはいえ、もちもちして、噛み応えのある地魚は、どうも寿司飯にはなじみにくいという「定説」を再確認しただけだった。いや、それどころか、新鮮な素材を使うと、その他の欠点が目立ちやすくなるということもわかった。

たとえば、山葵の質。これはおそらく、回転寿司最大の弱点の一つだろう。いい山葵を使うにはコストがかかる。そして、なにより揮発性の香りを維持するのが難しい。山葵の名産地、天城を背後に控える伊東の人たちは、山葵にうるさくないのだろうか。観光客としては、どうせなら地物の山葵を使って、伊豆らしさをアピールしてほしかった。

色の濃いつけ醤油にも、フレッシュな生醤油とは違う醤油くささを感じた。新鮮なイカや白身魚の味わいを引き立てるのはやはり、煮切りのような、色が薄く、さわやかなつけ醤油だろう。同じように、甘みと塩分の強い、ぼそぼそした酢飯も、主張が強すぎる。良く言えば茶がすすむ寿司、悪く言えばやたらと喉が渇く寿司である。

地元客が足繁く通う店というより、温泉帰りの観光客が電車の待ち時間に立ち寄る店か。結論としては、地物の魚介類を揃えるコストを考えても、値段相応の満足はえられないという印象だった。

おすすめ:地鯵(252円。肉厚で、脂がのっている。)

公式HPはこちら

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うず潮の「回転朝食」(番外編)

JR東日本系列の回転寿司チェーン、うず潮。店舗は駅構内、駅前など、人の流れの絶えない、飲食業としてはかなり有利な立地にある。それだけに、味覚面での改善努力が足りないのでは、という先入観もあるが、興味深いのは、早朝という、普通の回転寿司なら非稼動の時間を活かして、旅行者、通勤客に「回転朝食」を供していることだ。これがあるのは、東京、上野、浜松町、千葉、津田沼、品川の各店舗で、営業時間は朝7時から9時半まで、ただし、東京以外は平日限定である。今回は土曜ということで、東京駅構内ダイニングコートにある、東京本店に出かけた。

入口で500円払って案内された席には、すでに、ご飯、ワカメのみそ汁、味付のりが用意されている。これにレーンを回るおかずから3品を選べるというシステムである。さあ、食べようという段になってわかったのは、おかずが回転しているという事実より、まずは三品までという縛りが重くのしかかるということだ。実はこのシステム、東京、上野の二店だけで、他店は「ご飯・みそ汁・のり」の基本セット(280円または320円)に、取ったおかずの分を支払うことになっている。東京本店ではこの制限があるため、バランスよい朝食をとるには、あらかじめ頭の中で大雑把なメニューを組み立てておく必要がある。

では、レーンを回るおかずを見てみよう。

焼魚(鮭・鯖)、目玉焼、生卵、納豆、ほうれん草のおひたし、おでん、あら煮、しらすおろし、冷奴、・・・・・・

問題は、普通なら値段に差がつきそうなおかずが横一列に並んでいることである。他店のように、皿ごとに値段が違えば、あまり迷うことなく、欲しいおかずに手を伸ばすことができるが、みすみす安そうなものばかり選ぶのは癪に障る。しかし、そう思って、重量感ある主役級のおかずばかり選べば、今度は栄養的に偏った朝食になってしまう。

ここは、主役一つに脇役二つ、というのが妥当な線だろう。

回転寿司なら魚だろうということで、私はまず、主役として鮭の塩焼きを選んだ。いや、正直にいえば、和食朝食に焼魚は付きものだろうという先入観があって、思わず手に取ってしまったのだ。選択肢は鮭と鯖の二つしかなかった。

さて、ここで我々はある重大な選択をせまられる。すなわち、目の前におかずをそろえてから食べ始めるか、あるいは、流れるおかずを横目にあれこれ迷いながら食べるか、という二者択一である。私は後者を選ぶことにした。最初に三品取ったところで、魅惑的な四品目が目の前を通り過ぎることだって、ありうるではないか。できれば、悔いの残る朝食にはしたくない。回転系レストランでは、目移りすること自体が、一つのエンターテイメントになるのだ。そのために、三角食べという、日本が世界に誇る食事美学を犠牲にせざるをえないとしても、背に腹は代えられない。

というわけで、鮭をおかずにごはんを食べながら、次なるおかずを狙うことにした。

主役の次に来るべきは脇役、それも野菜系だろう。ということで、回転レーンに睨みをきかせるうち、主役の鮭を食べ終えたが、これも考えてみれば、選択肢は二つだけだった。ほうれん草のおひたしとしらすおろしである。私はなんとなくしらすおろしを手に取り、これも三品目を狙ううちに、あっけなく食べ終えた。しかし、ここで一つ、問題が生じた。というのも、しらすおろしというのは、おかずというより、軽いお口直しのようなもので、ごはんがまったく進まないのである。

当初の計画では、三品目は脇役、それもどちらかといえば主役に準ずるクラスのものを選ぶはずだった。これにはいくつか選択肢があった。納豆や目玉焼のような、たんぱく質系のおかず、そしてマカロニサラダや春雨サラダのような、いぶし銀系名脇役である。納豆は嫌いではないが、朝から食べる気はしない。目玉焼は、個人的には、ごはんのおかずではない。よく考えれば、それはマカロニサラダや春雨サラダも同じ、しかもよく見るとマカロニではなくスパゲッティーで、箸で食べるのは間抜けすぎる。春雨らしきものも、どんな味つけか見当がつかなかった。

このとき、ほかほか湯気を立てながら目の前に現れたのが、あら煮である。もちろん、それまでにも、あら煮らしきものは回っていた。しかし、このあら煮はほかほかであるだけでなく、煮汁がよく染みた大根がついているのだ。いい回転寿司の条件といえば、あらである。刺身の副産物であるところのあらを、時間外の回転寿司店で食べる。これぞ、「回転朝食」の醍醐味だろう。考えてみれば、これで、向付、お椀、煮物、焼物、ごはんという、日本料理の基本要素がそろった。多めに残ったごはんを消化するにも、ちょうどいい。

そう考えながら、二つのあら煮を見送り、これを選ぶことに決めた。ただ、三つ目のあら煮はなかなか回ってこなかった。やはり、人気があるのか、途中で誰かに取られてしまうのかもしれない。しばらく待って、ようやく手にしたとき、思わずにやりとしてしまった。あら煮は金目鯛らしき赤い魚の頭を甘辛く煮付けたものだ。

結論から言えば、これは思ったよりずっと味が濃く、片づけるのに骨が折れた。しかも、魚と大根という組み合わせは、よく考れば、しらすおろしとまったく同じである。避けられたはずの単調な繰り返しを選んだという意味で、このメニュー構成は思慮を欠いたものと言わざるをえない。バランスをとるには、二品目をほうれん草のおひたしにするべきだったのだろう。

完璧な「回転朝食」をとるには、もう少し修練が必要なようだ。心に余裕があれば、周囲の客がどんなメニューを組み立てるのか、観察することもできる。ふだんあまり見る機会のない、他人の朝ごはんというものが、意外と人それぞれ違うということもわかる。今度はぜひ、品数の制限がない他店で、思う存分、豪華な朝食コースを組み立ててみたい。

公式HPはこちら

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北澤倶楽部 一貫

新宿駅西口、ヨドバシカメラ前にある回転寿司店。公式HPがないのですべてはわからないが、歌舞伎町、西参道、参宮橋、そして熱海にも支店(またはFC店)があるらしい。ここは「安かろう悪かろう」のイメージが強かった回転寿司の常識を覆した店として知られる。いろいろな意味で奇妙なこの店のカウンターに座ると、回転寿司とは何か、という根本的な疑問が頭に浮かんでくる。

なぜ寿司を回すのか?

回転寿司に来て、そんなことを考えてしまうのは、いかにも高そうな金色の皿は1400円もするから。店名にもあるとおり、この店は基本的に一皿一カン、つまり、二カン2800円のネタがあるということになる。「極上ウニ」というのがそれで、高級店でよく見かける「小川のうに」の舟も見えた。ウニだけでも、三段階の価格が設定されている。では、なぜそれほど高価な寿司を回さなければならないのか。

実は私の見るかぎり、金色の皿は回っていなかった。回っているのは、干からびたウニや濁ったノレソレの軍艦など、衛生上、見るからに問題ありそうな皿ばかり。逆に、見本であることを示すために、あえて試食不可能な皿を回しているかのようにさえ見える。つまり、そこに回っているのは、かつての回転寿司の、負のイメージそのものなのだ。

回っている皿に決して手を出してはいけない。

これはもはや、回転寿司を否定する回転寿司であるといっていい。もしかすると、かつては金色の皿が回っていたこともあるのかもしれない。しかし、高額な皿を選ぶ客が、リスクを避けて、直接注文するようになるのも自然の成り行きだろう。実際、誰もが口頭で板前に注文をしていた。

さて、こうなると問題になるのは、寿司の質である。全体的に、ネタの質は高く、厚く大きめに切りつけてあるが、残念ながら、この気前のよさが裏目に出てしまっている。寿司としてのバランスがやはりよくないのだ。ネタがいいだけに、寿司の完成度の低さも際立つ。つまり、ネタさえよければうまい寿司ができるわけではない、という事実を確認するのにふさわしい寿司といっていい。逆にいえば、寿司とは酢飯の上に刺身をのせたものである、と力強く主張する、男らしい寿司である。この点は、実に回転寿司らしい回転寿司だ。

そして、この店にはもう一つ、回転寿司ならではの美点がある。それはネタの種類の豊富さである。つねに多種多様なネタを確保しようとすれば、品質にもばらつきが出る。食材の廃棄率が高まれば、当然原価率にも跳ね返るので、冷凍物や加工品を使わなければならないこともある。それでもメニューがさびしいよりはまし、というのが回転寿司の思想である。というのは、何を食べるかあれこれ迷うひとときが、回転寿司の客にとって、最も幸せな時間だからだ。

ところで、店に入ってすぐ、私はある不思議な現象に気づいた。ガイドブックにでも紹介されているのだろう、右隣も、一つ空席を挟んだ左隣も、中国系の観光客らしいグループだったのである。見ると、大トロ、ウニ、タラバガニなど、かなりの高額皿が、景気よく積み上げられていく。これを見れば、彼らが安さを求めてこの店を選んだわけではないことがよくわかる。この光景は、回転寿司が業界にもたらした、最も偉大な革命が何だったのかを思い出させてくれる。すなわち、明朗会計である。

こうして考えると、北澤倶楽部という、この風変わりな回転寿司店が、何を敵として戦っているのかが、見えてくる。それは、かつての立ち寿司とかつての回転寿司にまつわる負のイメージである。すなわち、

立ち寿司:会計が不明朗。一見と常連を差別化。
回転寿司:安いが、味はよくない。ネタは薄く、新鮮さに欠ける。

もちろん、現在では、一見客にやさしく、明朗会計を売りにする立ち寿司店も、立ち寿司並みのネタをそろえる回転寿司店も、めずらしくはない。ただし、世間の偏見が払拭されるまでは、このような店にも、それなりの存在理由があるのだろう。

その後、私の左隣に座った若いサラリーマンは、一皿二カンのサービス品二皿と本マグロ赤身一皿の計三皿、つまり明らかに原価率の高そうなものだけを食べてさっさと引き上げていった。普通の寿司屋なら野暮と嫌われる客も、堂々と賢人になれるのが回転寿司である。そして、これこそ、この店の正しい利用法なのだろう。

とはいえ、勘定を見ると、次のような疑問が頭に浮かぶのはやはり避けられない。

自分はなぜここに来たのか?

ここには、実は開店当初にも来たことがある。そのときも、まったく同じ疑問をもったことを思い出した。

おすすめ:天然本マグロ赤身(1カン168円。質の高いマグロ。ネタの切りつけも厚く、大きい。)

公式HPはなし。住所、営業時間についてはこちらを参照。

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☆金沢まいもん寿司

金沢に本拠を置く回転寿司チェーン。関東にはたまプラーザ店と港南台店があり、立ち寿司、持ち帰り寿司、宅配寿司なども展開している。マニラ、バンコク、ドバイ、香港などへの出店計画もあるようだ。

「加賀百万石の雅」をテーマにし、朱色を多用したたまプラーザ店の外装と内装は、温泉旅館の食事処というか、スーパー銭湯のような雰囲気。入店すると受付があり、銀行窓口のような番号札を受け取る。待合室とフロアはのれんで隔てられていて、席が空くのをじりじり待つ客は、のんびり食事を楽しむ先客にプレッシャーをかけることはできない。椅子に背もたれがあることからもわかるように、快適さを犠牲にして回転率を高めようという発想はないのだろう。

一般的な回転寿司に比べて、フロアを仕切るスタッフの数はずっと多い。見ると、客が入れ替わるたびに、調味料を置く台まで布巾で拭っている。醤油は関東風と金沢風の二種類、お茶は煎茶とほうじ茶の二種類あり、量の加減がしやすい軍艦用の醤油さしまで用意されている。

回っている寿司を見ても、乾きやすいものには透明なフィルムがかけられている。実際食べてみても、劣化しているものは少なく、皿を取って乾いていたら交換に応じると宣言している。店員に注文しようとして、声が届かないということもない。おひつのなかをはっきり確認したわけではないが、あらかじめ成形されたシャリ玉を手に取り、量を加減しながらネタに押しつけているようだ。

メニューは1皿130円から。とはいえ、実際食指が動くのは260円以上のネタか。黒板に書かれた本日のおすすめには、それぞれ産地が明記されている。がすえび、白えび、なめら、のどぐろ、赤西貝、万寿貝など、北陸の魚介類は、やや値段ははるが、一度試してみる価値はある。

メニューには、刺身の盛り合わせやへしこ、からすみ、塩辛などの酒肴、菊姫、天狗舞などの北陸銘酒も揃っている。郊外とはいえ、駅からそれほど遠くないので、海鮮居酒屋として使うことも可能だろう。タッチパネルのある座敷もあり、前菜、椀物、揚物などのついたコースも用意されている。揚物は既成の天ぷら粉を使っているのか、サクサクした食感。味はあまり期待しないほうがいいが、揚げたてを食べられるというメリットがある。

ネタの質、サイドメニューやドリンクメニューの充実、スタッフの多さ、フロアマネージメントの洗練など、回転寿司の弱点の多くを克服しているという意味で、人気があるのもうなづける。難をいえば、お会計まで、回転寿司レベルを軽々と超えてしまうことか。平日はお得なランチメニューもあるが、午後3時から5時までは昼休み。混みそうな時間帯に行くときは、携帯サイトを通して予約し、待ち時間を減らすという手もある。(カード可)

おすすめ:のどぐろ(640円。上品な脂がのり、身がしまっている。)

公式HPはこちら

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回し寿司 活

梅が丘に本店をおく有名チェーン、美登利寿司が手がける回転寿司。店内には活魚の泳ぐ水槽があり、職人たちが忙しく魚を捌き、握るのが見える。人気の店らしく、食事時を外して行っても、客足が絶えることはないようだ。

注文は伝票で。貝類は新鮮で歯ごたえがよく、透明な甘みがある。冷凍ものと活けものがあるネタはそれぞれ明記されている。うにも産地によって二種類。一番安い皿の種類が最も多く、価格帯も含め、選択肢はかなり豊富だ。酢飯に比べて、ずいぶん大きい種がのっているが、このサービスは一昔前の流行だろう。バランスを考えれば、もう少し小さいほうがいい。

日本酒は地酒、冷酒、燗酒が揃う。サワーも数種類。生牡蠣、さざえ、唐揚げ、エビフライなど、酒肴になりそうなメニューもある。活あじは鮮度がよく、身がしまりすぎて酢飯になじみにくいが、刺身として味わうなら、あのコリコリした歯ごたえも悪くないか。もっとも、イカや小魚でもなければ、しめてから多少時間をおいたほうが旨みが増すのはたしかである。

口コミでは評価が割れるが、回り続けて乾いた寿司と握りたての寿司の差を考えると不思議ではない。私も回っている寿司を取って失敗したことが何度かある。回転寿司に勝ち組・負け組があるとすれば、回り続ける寿司を取る客は負け組である、ということをしみじみ感じたが、以後、直接注文することにためらいはなくなった。ネタの名をいちいち伝票に書きこむわずらわしさはあるが、全体的に見て、やはりコストパフォーマンスの高い店である。

おすすめ:活ほっき貝(315円。肉厚で、しゃきしゃきした歯ごたえがある。)

公式HPはこちら(目黒店)。大宮碑文谷にも支店がある。

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がってん寿司

埼玉を中心に、東京、群馬、千葉、栃木などにチェーン展開する回転寿司。回っているネタの種類も多いが、レーン内にいる店員に注文すると、「がってん承知」という威勢のいい掛け声で応えてくれる。見ると、ネタの切りつけは、シャリに比べて大きいようだ。個人的には、もう少し小さいほうがいいが、これを喜ぶ人もいるのかもしれない。

マグロがよく回っているので、わざわざ注文するのも失礼かと思い、手に取ると、ネタの四隅が乾いて固かった。400円のインドマグロ中トロだっただけに、これは痛い。それでも、見るからに干からびていたわけではない。さすがに、そんな皿は避けることにしている。味のほうも、養殖らしく、脂にかなりしつこいクセがあった。気を取り直して、というか、口直しに、ふつうのマグロも取ってみたが、これも同じように乾いていた。もしかすると、回転コンベアが厨房を通り、死角に入る間に、モイスチャーを補っているのかもしれない。ただ、これを見た目で判断できないのは、回転寿司ファンとして、未熟といわれても仕方ないだろう。

隣のおばさんが、回っているネタのサビ抜きを偉そうに注文していたので、心中でせせら笑っていたが、考えてみれば、回転寿司通としては、あちらのほうが一枚も二枚も上手である。それにしても、たまたま取った一皿が乾いていたというなら見て見ぬふりをするが、二皿続けてというのは、よっぽど客の運が悪いか、店の管理が悪いかのどちらかだろう。

訪れたのは土曜日のランチタイム、つまり店がかなりにぎわう時間帯である。多様なネタを回そうという野心は買うが、品質管理については、ぎりぎりの原価率で、いかに廃棄ロスを減らすかに心を砕く、「くら寿司」や「スシロー」のような格安店のほうが、一歩も二歩も先んじている。

変わったネタや産地を明示したネタを揃え、注文にも気持ちよく応じる店員教育がされているだけに、こんなことでは引き下がりたくない。そこで、三皿目は、海苔がしおれてない軍艦を取った。軍艦だって、海苔さえ換えれば、リフレッシュすることはできるが、回る皿を選ぶ、一つの目安にはなるだろう。これは問題なかった。

直接注文したネタも、当然大丈夫だったので、一皿食べて乾いていたら、二皿目からはすべて注文するというのが正しい戦略か。店舗や時間帯によっても状況は変わるので、後は臨機応変にふるまうしかない。回転寿司の魅力は半減してしまうが、回っている皿は、何が何でも取らないという姿勢を貫くのも、一つの手段である。それでも、店員は大きな声で、「がってん承知」と応えてくれるだろう。

公式HPはこちら

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☆まぐろ人 浅草本店

下町の風情を求めて、全国各地、世界各地から旅行者が押し寄せる観光地、浅草。ここに来たら、誰でも江戸っ子気分で寿司をつまみたくなるのか、街のいたるところに、寿司店が軒を連ねている。昔ながらの佇まいが懐かしい老舗や江戸前仕事をモダンに洗練させた高級店だけではなく、築地場外に店を構える24時間営業のチェーン店もいくつか進出しているところを見ると、どうやらここ、浅草は、寿司の「激戦区」と化しているらしい。

まぐろ人は浅草に本拠を置く人気店である。平日は午後3時から5時まで昼休みをとるという営業形態も、回転寿司としてはめずらしい。浅草 まぐろ人の他に、吉祥寺など、西東京エリアに支店をもつ江戸前 まぐろ人があるが、後者は前者を経営する㈱栄都商事から独立した㈱まぐろ人が展開するチェーン。どこまで共通なのかはわからないが、HPも別々なので、ここでも一応区別しておく。

この店のよいところは、コンベア上を、まさにすし詰め状態で皿が回っていること。たしかに、メニューを読めず、魚の名前を言えない外国人にとって、目の前に多彩な寿司が回っていることは、この上なくわかりやすいプレゼンテーションになるだろう。この日も韓国から来たらしいグループを見かけたが、納豆巻を食べて、顔をしかめていたのが印象的だった。

握りは回転寿司としてはやや小ぶり。漬けや昆布〆などの仕事をしたネタから、本ミル貝、アワビ、トラフグ、タラバガニなどの高級ネタまで、かなり豊富な品揃え。アルコール類の選択肢もいくつかあり、毛ガニ、ツブ貝、アンキモなど、酒肴になりそうな皿もいくつか回っていた。後ろで待つ客がいれば、長居もしにくいかもしれないが、人気店らしい活気あふれる雰囲気は、回転寿司ならではのものだろう。

おすすめ:旬三種(490円。この日は、サヨリ、ホタテ肝、タラ昆布〆。)

公式HPはこちら(ただし、現在リニューアル中)。

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