関連書籍(酒場)

『東京酒場漂流記』(なぎら健壱)

フォークシンガー、なぎら健壱による酒場エッセイ。東京生まれの著者は変わりゆく下町の風景をどこか恨めしげな目で眺めている。それだけに古い下町の風情を残す酒場に出会う喜びも大きい。出会いというより、再会というべきだろうか。というのは、下町酒場は著者が青春時代、痛飲しながらくすぶっていた思い出の風景だからだ。それはテーマパークを巡る物見遊山の旅ではなく、それぞれの人生がなまなましく交差する生活者の漂流である。そのセピア色の風景は、個人的記憶に基づきながら、70年代という時代の空気をよく伝えている。単行本の出版は83年、30代に達した著者がそれまでの酒場漂流を回想している。なかにはいまも名店として賑わう店があり、いつの間にか消えた場末の店がある。下町酒場の風景がホッピーや店構えだけではなく、そこに出入りする人々によって織りなされることがわかる一冊。

東京酒場漂流記 東京酒場漂流記

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Book 東京酒場漂流記

著者:なぎら 健壱
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『酒場のオキテ―「酒通」の「粋」がわかる本』(吉田類)

BS-i「吉田類の酒場放浪記」でおなじみの吉田類による酒場案内。画面にハレーションをおこすチェックのハンチングをかぶって登場することも多い。著者ならではのダンディズムなのだろう。その独特のスタイルは、以前浅草の酒場で出会った粋な酒飲みにあやかっているらしい。俳句をたしなみ、「酒場詩人」ともよばれる。「酒場放浪記」を見るかぎり、太田和彦のような気どりがない分、常連客に近づき、酒場の日常に溶けこむのがうまい。美食家をてらわず、酒場の活気を求めて、「ディープ」な店にも進んで踏みこんでいく。一見客を拒むかのような親密な空間に、慎重かつ大胆に潜りこむ心得が、酒場のオキテであり、に通じる道なのだろう。店選びにも、気どりがない。放浪は浅草、下町にはじまり、新宿、中央線沿線を経て、全国にまで広がっていく。著者が望むように、出張や酒場巡りのお供にしたい実用的な一冊である。

酒場のオキテ 酒場のオキテ

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酒場のオキテ―「酒通」の「粋」がわかる本 酒場のオキテ―「酒通」の「粋」がわかる本

著者:吉田 類
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『居酒屋道楽』(太田和彦)

CS旅チャンネル「ニッポン居酒屋紀行」でおなじみの太田和彦による居酒屋探訪記。前著、居酒屋放浪記シリーズ(全三巻)は、はじめて行く地方の街での居酒屋探しにいつも重宝している。著者はこだわりある店を見抜く嗅覚の持ち主。良心的な店が多いが、庶民的感覚からみればやや高くつく。「上級者向け居酒屋案内」である本書では、酒飲みの美学というか、ダンディズムが語られる。オヤジであることに開き直っているようで、開き直っていない。枯れているようで、枯れきっていない。目指すところは、文人的酒徒だろうか。文化的であろうとする分、放浪記シリーズにあった庶民性実用性が失われている。

居酒屋好きにとって興味深いのは、「下町ハイボールの秘密のエキス」についての記述。天羽乃梅という梅エキスで、かねます、大はしなどの名店でも、隠し味として使われているという。

居酒屋道楽 居酒屋道楽

著者:太田 和彦
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ニッポン居酒屋放浪記 立志編 ニッポン居酒屋放浪記 立志編

著者:太田 和彦
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ニッポン居酒屋放浪記 疾風篇 ニッポン居酒屋放浪記 疾風篇

著者:太田 和彦
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ニッポン居酒屋放浪記 望郷篇 ニッポン居酒屋放浪記 望郷篇

著者:太田 和彦
販売元:新潮社
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『落語を食べる』(相羽秋夫)

毎日新聞大阪本社版の夕刊に連載されているシリーズを書籍化したもの。

「本書は、落語の中に描かれた食べ物に注目して、それらの料理が、実際にどこに行ったら口にすることが出来るのか、を紹介したガイドブックです。前半は落語のあらすじ、後半はお店の案内という体裁をとっております。」

ということだが、落語と紹介された店との間には、同じ料理を扱っているという以外の関連性はない。噺家が通った店でもなく、落語の雰囲気が味わえる店でもない。よくできた落語のように、食欲をそそる何かがあるわけでもない。その意味で、落語をダシにした食べ歩きの本ぐらいに考えたほうがいいかもしれない。紹介された店はすべて関西圏

落語を食べる 落語を食べる

著者:相羽 秋夫
販売元:東方出版
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