世界“カイテンズシ”戦争 寿司 vs Sushi
先日(1月5日)のNHKスペシャルで回転寿司が取り上げられた。「寿司 vs Sushi」というのは、世界進出を目指す日本企業とイギリス企業の覇権争いのことで、中東のドバイは元気寿司とYO!Sushiという二大チェーンが、意外にも、はじめて同じ地域に出店したケースなのだという。先に店を構え、繁盛しているYO!Sushiに対して、あくまで正攻法的に日本の握り寿司を根づかせようとする元気寿司は苦戦を強いられている。それまで生魚を食べる文化のなかった中東では、ヨーロッパ風のロール寿司など、フュージョン寿司に強みのあるYO!Sushiに、やはり一日の長があるのだろう。
回転寿司という仕掛けに着目したイギリス人の社長は、外国人(非日本人)シェフは日本人のように寿司に対する固定観念にしばられていない分、自由な発想で新しいメニューを生み出すことができるという。彼は寿司という料理の潜在的可能性だけではなく、回転する寿司の演出、つまり回転寿司のエンターテイメント性にも重きを置いているようだ。
したがって、「寿司 vs Sushi」という図式は、「すし」というものに対する両者のコンセプトの違いを表すものでもある。日本において、それまでの立ち寿司の伝統を打ち砕く、いわば革命勢力であった回転寿司チェーンが、ここでは日本の握り寿司の伝統にこだわることを宣言する。いまのところ、守りに入ったほうが劣勢のようだ。番組はドバイの「戦況」をそう伝えている。YO!Sushiの本拠地、ヨーロッパへの進出を視野に入れる元気寿司にとって、この事実はどう映るのか。
元々東南アジアを起源とする発酵食品であるすしが、伝播の過程で素材・調理法を変えながら、やがて今日の握り寿司を生んだことを考えれば、寿司が世界的に普及する過程であらためて変化したとしても何の不思議もない。逆に言えば、いくら外国人が奇抜な発想でこしらえたとしても、寿司が寿司でなくなるわけではない。もちろん、寿司が日本人だけのものであるはずもない。ピザやカレーの場合のように、本場のそれとは似て非なるものだからこそ、世界各国で受け入れられるのだ。
番組はその一方で、アジア諸国など、それまで生魚を食べる文化のなかった国々に新しい食文化を普及させた功績も指摘している。とはいえ、寿司の世界的普及によって問題になるのはむしろ、後半言及された水産資源の枯渇の危機だろう。この事実は、生魚という食材にこだわらない未来の寿司に、確固たる存在理由を与えるはずだ。
乱獲によって減った魚に代わる新たな食材探しも進んでいる。ここでも日本人と外国人の対応は違う。「代替魚」や「食品偽装」が問題になるのは、日本人が新しい寿司種より、慣れ親しんだ名前を好む傾向があるからだろう。他方、中国産のざりがにを試すYO!Sushiのシェフは、新たな食材をいかす新たな調理法の開発に余念がない。
この柔軟さというか、いいかげんさが、寿司という食文化に新風を吹きこむのか。あるいは、「スシブーム」を単なる一過性の流行に終わらせてしまうのか。結論を出すにはまだ早いようだ。
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