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二葉鮨の「おきまり」

銀座四丁目、晴海通りと昭和通りの交差点から一歩入った路地裏にある、古びた木造二階建ての店である。戦後すぐにできた建物らしく、正面左には屋台を模した出窓が埋めこまれている。カウンターの上部に屋台のスタイルを取り入れた店は多いが、外壁の装飾に使う例はめずらしい。この「屋台」で鮨が商われたことはないようだ。

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「握」と白く染め抜かれた紺の暖簾をくぐり、緩い弧を描くカウンターの隅に座る。幅広の、黒い塗りのつけ台が、客に向かって傾いている。つけ場の後ろの鴨居には、かつて寿司を「積み込んだ」とおぼしき、染付けの大皿が飾られている。9席のカウンターのほかに、4席のテーブル席が3つ。店内の造作は、どこを見回しても、名店の歴史を感じる重みがある。

卸し金を取り出し、山葵を擦りはじめた主を見て、こちらもすっと背筋が伸びる。昼の「おきまり」とはいえ、居住いを正して待ち受ける格好である。かつて名だたる職人たちが立ったつけ場は、客の視線を主の一身に集める舞台のようだ。

この日の「一人前」は、鮃、中トロ、鯖、小柱、海老、穴子、鉄火巻、海苔巻、玉子焼。

昼時だからか、大ぶりな握りは、酢と塩のよくきいた、媚びない味である。種の質は、当然、最上とはいえないが、腹にずしんとくる存在感がある。海老は生、穴子は煮ておいたのを軽く炙って出す。鉄火巻は、細長い赤身を鉛筆のような形に切って、もう一度まとめるという手間をかけていた。こうすると、噛んだときに、海苔、酢飯、種の三つが、同時にほぐれていく。甘みを排した人肌の酢飯に、甘く煮たかんぴょうがよく合う。(2620円)

公式HPはなし。アドレス、営業時間についてはこちらを参照。

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