トップページ | 『落語を食べる』(相羽秋夫) »

『志ん生一代』(結城昌治)

五代目古今亭志ん生の生涯を描いた長編小説。著者によれば、無名時代が長かった志ん生の前半生についての資料を揃えるのが困難なため、評伝という形をとらず、小説というスタイルを選んだという。志ん生ファンにはよく知られたエピソードが全編に散りばめられている。実際、伝記的興味をかきたてるネタには事欠かない生涯である。文学的価値や資料的価値は問わないことにしよう。ファンなら喜んで読みきってしまうにちがいない。

興味深いのは、無名時代の志ん生が、中央の名だたる寄席には出演できず、地方や場末のドサ回りを続けたということ。師匠をしくじって、講談師の一座に加わったこともある。当時、ドサ回りばかりしていると、芸が(田舎)クサくなる、と言われた。とはいえ、戦後のラジオ落語全盛時代に花開く志ん生の破天荒な話芸は、種々雑多な客層との、直接的交流から生まれたものではないか。やがて、五代目志ん生を襲名、頭角を現すが、戦争末期になると、空襲がなく、酒が飲めるという言葉に釣られ、三遊亭圓生とともに占領下の満州を慰問に回って終戦を迎える。この戦争体験が志ん生の芸を変えたという。元々、稽古には熱心な噺家だった。戦争を経て、芸が花開くと、時代も彼に追いついたのである。

志ん生一代〈上〉 志ん生一代〈上〉

著者:結城 昌治
販売元:学陽書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

志ん生一代〈下〉 志ん生一代〈下〉

著者:結城 昌治
販売元:学陽書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

トップページ | 『落語を食べる』(相羽秋夫) »

関連書籍(落語)」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『志ん生一代』(結城昌治):

トップページ | 『落語を食べる』(相羽秋夫) »